医療機関の採用コストを削減したいというご相談をいただくことがあります。ただ、実際に何にいくらかかっているのかを正確に把握できている医療機関は、思いのほか少ないのではないでしょうか。媒体費や紹介手数料は請求書として残る一方、見学対応や面接調整にかかる時間はコストとして意識されにくいものです。この記事では、1人あたりの採用単価という視点から、採用コストの測り方と見直しの考え方を整理します。

医療機関の採用コストが見えにくい理由

医療機関の採用活動では、求人媒体への掲載料や人材紹介会社への手数料など、目に見える費用がいくつも発生します。ただ、これらを個別に管理していても、「今、1人採用するのにいくらかかっているのか」という総額で捉えられている医療機関は多くありません。

媒体費や紹介手数料は個別の請求として管理できても、採用担当者が見学対応や面接調整に費やす時間、内定辞退や早期離職によって発生し直す採用活動の費用までは、日常業務の中に埋もれてしまいがちです。採用コストを削減する取り組みを始める前に、まずは費用の全体像を正確に測るところから始める必要があると考えています。

採用単価(1人あたり採用コスト)の計算方法

採用コストを削減する土台になるのが、「採用単価」という考え方です。採用単価とは、一定期間に採用活動へかけた費用の合計を、その期間に採用できた人数で割った、1人あたりの採用コストを指します。

計算式はシンプルです。

  • 採用単価 = 採用活動にかかった費用の合計 ÷ 採用人数

分子に含める費用としては、次のようなものが挙げられます。

  • 求人媒体への掲載料
  • 人材紹介会社への手数料
  • 採用サイトや採用ページの制作・運用費用
  • 合同説明会や施設見学会の出展費用
  • 面接・見学対応にあたった職員の人件費(概算でよい)

このうち、媒体費や紹介手数料は請求書として残るため把握しやすい一方、職員の人件費は見落とされがちです。1件の見学対応に管理者と現場スタッフが合わせて1時間程度を割いているとすれば、その時間分も採用コストの一部として計算に含めておくと、実態に近い数字が見えてきます。

総額で見えていない費用まで洗い出す

採用単価を正しく計算するには、採用活動にかかる費用を漏れなく洗い出す作業が欠かせません。作業療法士として現場に立っていたころ、ある施設の管理者から「求人広告費だけを見て採用コストを判断していたが、見学対応や面接調整にあてていた時間まで含めると、想定よりずっと高くついていた」という話を聞いたことがあります。

見学対応・面接調整・内定者フォローといった業務は、採用担当者や現場責任者の通常業務の合間に行われることが多く、コストとして意識されにくい部分です。まずは直近半年から1年程度の採用活動を振り返り、媒体費・紹介手数料・見学や面接にかけた時間を一覧にしてみることをおすすめします。

早期離職が採用単価に与える影響

採用単価を押し上げる大きな要因のひとつが、早期離職です。入職後数か月で退職に至った場合、その人材の採用にかけた費用は、実質的に別の候補者を採用し直すための費用として積み上がっていくことになります。

早期離職の背景には、求人票やホームページで伝えていた職場の情報と、入職後に感じた実態とのギャップが影響しているケースも見受けられます。採用前の情報提供を丁寧に行うことは、コストの観点からも見直す価値のあるポイントではないでしょうか。応募段階での情報の伝え方については、介護の採用で人材紹介に頼らない方法|自社応募を増やす3つの土台でも触れていますので、あわせてご確認ください。

自社採用チャネルという「初期費用型」の選択肢

採用単価を長期的に見直していくうえで検討したいのが、採用サイトや採用ページといった自社チャネルの整備です。求人媒体や人材紹介との費用構造の違いそのものは採用サイトと求人媒体の違い|医療介護での使い分けで整理していますので、ここでは単価計算への影響だけを見ていきます。

自社チャネルは初期整備に費用がかかる代わりに、その後の応募1件あたりに追加費用が発生しにくい構造です。そのため、分母となる自社チャネル経由の応募件数が増えるほど、先ほどの計算式で出した1件あたりの採用単価は下がっていく形になります。逆に言えば、整備しただけで応募が来ない状態が続けば、単価は下がりません。ただし、採用ページを整えればすぐに効果が出るわけではなく、求職者が知りたい情報をどう整理して伝えるかが前提になります。採用ページに載せる要素の型については、採用ページの書き方|医療・介護施設向けで詳しく整理していますので、参考にしてください。

人材紹介を完全にやめる必要はありません。急な欠員が出た際の選択肢として残しつつ、自社チャネルを並行して育てておくことで、採用単価を全体として見直しやすくなると考えています。

まとめ|採用コスト削減は「測る」ことから始まる

医療機関の採用コストを削減する取り組みについて、採用単価の計算方法から見直しの視点までを整理してきました。

  • 採用単価は「採用費用の合計 ÷ 採用人数」で算出し、媒体費・紹介手数料に加えて見学対応などの人件費も含めて計算する
  • 見学対応や面接調整にかかる時間は見落とされやすく、採用コストの実態を歪める要因になりやすい
  • 早期離職は採用単価を押し上げる大きな要因であり、採用前の情報提供の丁寧さが影響している場合がある
  • 人材紹介は都度課金型、自社チャネルは初期費用型という構造の違いを踏まえ、両者を使い分けることが現実的

まずは直近の採用活動を振り返り、1人あたりの採用コストがいくらだったのかを一度計算してみることから始めてみてはいかがでしょうか。

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佐伯 昭宏
作業療法士 / BIND THREE 代表

作業療法士として20年以上、病院・介護施設の現場に携わる。現場経験とWeb制作の両面から、医療・介護施設の「伝わるWeb」づくりを支援。採用代行・人材紹介ではなく、Web上の情報整理・改善に特化。

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