情報発信の対象は新規の利用希望者だけではない

介護施設のホームページというと、新しく入所や利用を検討している方に向けた情報発信を思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。ですが、実際にホームページの情報を頻繁に確認しているのは、すでに家族を施設に預けているご家族であることが少なくありません。面会のルール、感染症流行時の対応方針、日々の様子といった情報を、介護施設の家族向け情報発信としてホームページ上に整えておくことは、新規集客とは別の意味を持つ取り組みです。この記事では、すでに利用しているご家族に向けた発信をどう設計するかを、現場での経験も踏まえて整理します。

家族からの電話問い合わせが同じ内容に集中していないか

作業療法士として現場に立っていた頃、面会のルールが変更になるたびに、事務所の電話が同じ質問で鳴り続けていた光景をよく覚えています。「今日は面会できますか」「発熱者が出た場合はどうなりますか」といった問い合わせは、家族にとっては個別の事情に見えても、施設側から見ると毎回ほぼ同じ内容の繰り返しになりがちです。この状況は、電話対応をしているスタッフの手を止め、本来の介護業務に割ける時間を圧迫する要因にもなります。

面会制限や感染症流行時の対応方針をホームページの固定ページにまとめ、変更があるたびに更新日とあわせて掲示しておくことで、家族が電話をかける前に自分で確認できる状態をつくれます。すべての問い合わせがなくなるわけではありませんが、同じ内容の電話が減ることは、現場の負担を考えるうえで意味のある変化ではないでしょうか。

日々の活動を伝える発信が信頼につながる可能性

面会に来られない期間が続くと、家族は「施設の中で何が行われているか」を想像するしかなくなります。行事の様子や日々のレクリエーション、献立の一例などをブログや専用ページで定期的に発信することは、家族が施設の日常をイメージする材料になります。写真がなくても、活動内容を短い文章で紹介するだけで十分な場合もあります。

更新の頻度については、無理のないペースを決めておくことが長続きのコツです。更新が止まった状態が続くと、かえって「様子が分からない」という不安につながりかねません。どの程度の頻度で発信を続けるべきかは、医療機関のホームページ更新頻度の目安と優先順位でも取り上げていますので、あわせてご覧ください。広報誌を紙で発行している施設であれば、同じ内容をPDFやページとしてホームページに掲載するだけでも、家族が確認できる手段が一つ増えます。

写真の掲載は同意の取り方を最優先で考える

日々の活動を伝えるうえで写真は分かりやすい手段ですが、顔や氏名、居室番号が特定できる写真は個人情報にあたります。掲載の可否は、入居時や利用開始時の説明の中で口頭だけで済ませるのではなく、同意書のような記録に残る形で確認しておくことが望ましいと考えています。

具体的には、次のような運用を検討する施設が増えています。

  • 入居・利用契約時に、ホームページやSNSへの写真掲載可否を選べる同意書を用意する
  • 掲載可否の設定を家族ごとに管理し、更新のたびに確認できる状態にしておく
  • 家族から「掲載をやめてほしい」という申し出があった場合の対応手順をあらかじめ決めておく
  • 撮影時に居室や氏名が写り込んでいないか、掲載前にダブルチェックする

同意の取得を後回しにしてしまうと、後になって「聞いていない」というトラブルにつながる可能性があります。個人情報の取り扱いは、情報発信の内容以上に優先して整えておくべき部分です。

既存家族向けの発信が検討中の家族の判断材料にもなる

ここまで紹介してきた発信は、あくまで現在利用しているご家族に向けたものです。ただ、こうした情報は非公開にする必要がないものがほとんどで、公開の形で発信していれば、見学や入所を検討している別の家族の目にも触れます。日々の活動や行事の様子が継続的に発信されているホームページは、検討中の家族にとって「実際の雰囲気を知る手がかり」になる場合があります。

新規の利用者向けにホームページをどう構成するかについては、介護施設のホームページの作り方|入所検討家族目線で解説で詳しく取り上げています。既存の家族向けの発信と、検討中の家族向けの構成は目的が異なりますが、両方を意識して設計することで、それぞれの情報が補い合う形になりやすいのではないでしょうか。

まとめ|家族向け情報発信は日常の積み重ねで整える

  • 面会方針や感染症流行時の対応は固定ページにまとめ、更新日を明記して電話問い合わせの集中を減らす
  • 日々の活動・行事・献立・広報誌の発信は無理のない頻度を決めて続けることが大切
  • 顔・氏名・居室が特定される写真の掲載は、同意書など記録に残る形で確認してから行う
  • 既存家族向けの発信は、結果として検討中の家族の判断材料にもなり得る

介護施設の家族向け情報発信は、一度整えて終わりではなく、日常の運用として続けていくものです。無理のない範囲から始め、少しずつ更新の仕組みを整えていくことをおすすめします。

まずは、無料のWeb診断から。

作業療法士として20年以上、医療介護の現場を歩いた専門家が、貴施設のホームページを拝見し、改善ポイントを3つに絞ってお伝えします。契約義務はありません。

無料診断を申し込む 「ページを見た」とご返信いただくだけでも大丈夫です
佐伯 昭宏
作業療法士 / BIND THREE 代表

作業療法士として20年以上、病院・介護施設の現場に携わる。現場経験とWeb制作の両面から、医療・介護施設の「伝わるWeb」づくりを支援。採用代行・人材紹介ではなく、Web上の情報整理・改善に特化。

← コラム一覧へ戻る