訪問看護ステーションのインスタグラム活用について、管理者の方からご相談をいただく機会が増えています。「採用のために始めたいが、何をどう投稿すればいいか分からない」という声が多いのですが、結論から先にお伝えすると、訪問看護のインスタグラム活用は、利用者の紹介を直接増やす施策というより、採用活動と事業所の雰囲気を伝える手段として捉えるほうが実態に近いのではないでしょうか。この記事では、その理由と、守秘義務を守りながら運用するための具体的な考え方をまとめます。

訪問看護がインスタグラムを活用する意味とできないこと

まず整理しておきたいのは、訪問看護の利用依頼の多くはケアマネジャーや病院の退院支援・連携室を経由して届くという点です。利用者やご家族がインスタグラムを見て直接申し込むという流れは、現状ではあまり想定しにくいと感じています。

そのため、集患の入口としての効果を過度に期待すると、運用が続かなくなりがちです。訪問看護のインスタグラム活用は、採用活動と、事業所の雰囲気を可視化することを主な目的に据えるのが現実的だと考えています。連携先の医療機関やケアマネジャーの目に触れる場面では、事業所への信頼感を補強する役割も期待できるかもしれません。

看護師が転職先を選ぶときインスタグラムに何を見ているか

私自身、作業療法士として在宅医療の現場を歩いてきたなかで、転職を考えているスタッフから「求人票だけでは、どんな人たちと働くのか分からなくて不安だった」という話を何度も聞いてきました。給与や勤務条件は求人票で分かっても、日々の雰囲気や同僚との関係性までは伝わりにくいものです。

そこで役立つのがインスタグラムです。勉強会の様子やスタッフの表情が伝わる投稿を重ねることで、応募を検討している看護師が「ここで働くイメージ」を持ちやすくなり、訪問看護師の採用を成功させるコツで紹介しているような、条件面だけに頼らない採用活動につながる可能性があります。

投稿で最優先すべきは守秘義務と個人情報の取り扱い

インスタグラム活用を始める前に、最も時間をかけて決めておくべきことがあります。それが守秘義務と個人情報の取り扱いです。訪問看護は利用者のご自宅にお邪魔する仕事であるため、一般的な採用広報以上に注意が必要になります。

具体的には、次のような点をルール化しておくことをおすすめします。

  • 利用者・ご家族が特定されうる情報は一切投稿しない(氏名・住所・疾患名はもちろん、投稿の文脈からも推測できないようにする)
  • 訪問先の背景の写り込みに注意する(表札、カレンダーの書き込み、処方薬の袋、郵便物、車のナンバープレートなど)
  • スタッフの顔出しは本人の同意を得てから行う(口頭だけでなく、書面や社内フォームなど記録に残る形が望ましいでしょう)
  • 投稿前に必ず第三者がチェックする担当を決めておく(撮影者本人だけの判断で公開しない)

こうした確認体制を先に整えておくことが、安心して運用を続けるための土台になると考えています。

あわせて意識しておきたいのが、事業所の公式アカウントも、ホームページと同じように広告としての見え方を問われる場合があるという点です。ケアの効果や利用者の変化を具体的に示すような投稿は避け、事業所の環境や採用に関する情報にとどめておくほうが安全です。医療広告ガイドラインの考え方については、医療広告ガイドラインとホームページの注意点で整理していますので、投稿ルールを決める際の参考にしてください。

何を投稿するか|事業所の雰囲気が伝わるネタの選び方

守秘義務への配慮を前提としたうえで、投稿ネタとしては次のようなものが考えられます。

  • 社内勉強会や研修の様子
  • 事業所内の風景(休憩スペース、ミーティングの様子など)
  • スタッフの1日の流れ紹介
  • 新人への同行訪問・教育体制の紹介
  • 使用している記録システムや訪問用車両などの環境紹介

いずれも「利用者の情報」ではなく「事業所の環境」に焦点を当てている点が共通しています。この線引きを意識すると、投稿内容に迷ったときの判断基準になります。

たとえば新人への同行訪問を紹介する際に、教育担当者からの一言コメントを添えておくと、応募を検討している看護師に「分からないことを相談しやすい職場かどうか」が伝わりやすくなります。研修の様子であれば、テーマと参加人数を書き添えるだけでも、学ぶ機会がある事業所だという印象につながります。特別な出来事を待つのではなく、日々の小さな場面を淡々と積み重ねていくことが、事業所の雰囲気を伝える近道ではないでしょうか。

無理なく続けるための運用体制

インスタグラム活用でよくあるつまずきが、特定のスタッフに運用が集中し、負担になって更新が止まってしまうことです。継続のためには、次のような工夫が有効だと考えています。

  1. 投稿頻度は週1回程度など、無理のないペースに設定する
  2. 担当を1人に固定せず、複数人で持ち回る、または撮影と投稿を分担する
  3. 投稿の型(キャプションの構成や使うハッシュタグなど)をテンプレート化し、毎回ゼロから考えなくて済むようにする

小さく始めて型を作り、無理なく続けられる仕組みに落とし込んでいくことが、結果的に事業所の認知の入口になり得るのではないでしょうか。

まとめ|訪問看護のインスタグラム活用で意識したい3点

最後に、この記事の内容を整理します。

  • 訪問看護のインスタグラム活用は、利用者集客より採用・雰囲気の可視化が主な役割と捉えるほうが実態に近い
  • 守秘義務と個人情報の取り扱いを最優先し、投稿前チェックの体制を先に整える
  • インスタグラムは雰囲気を伝える場、条件や制度、応募導線は採用ページの書き方|医療・介護施設向けで扱うようなホームページ側で担うという役割分担を意識する

両者を役割分担させながら運用することが、無理のない採用広報につながっていくのではないでしょうか。

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佐伯 昭宏
作業療法士 / BIND THREE 代表

作業療法士として20年以上、病院・介護施設の現場に携わる。現場経験とWeb制作の両面から、医療・介護施設の「伝わるWeb」づくりを支援。採用代行・人材紹介ではなく、Web上の情報整理・改善に特化。

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