「電話がつながらず、予約をあきらめて他院を探した」という患者さまの声を、クリニックの現場では耳にすることが少なくありません。予約システムの導入は、電話予約だけでは拾いきれない取りこぼしを補う手段として、多くのクリニックで検討されるようになりました。
ただし、予約システムを導入しただけで自動的に集患につながるわけではありません。診療時間や患者層に合った型を選び、ホームページ上のどこに予約ボタンを置くかまで考えて初めて、実際に使われる仕組みになります。
この記事では、電話予約の限界から予約システムの型の違い、診療科ごとの向き不向き、導入後の導線設計まで、医療介護の現場を20年以上歩いてきた作業療法士の視点で整理します。
電話予約だけでは拾いきれない取りこぼし
電話予約には、診療時間内でなければ受け付けられないという制約があります。仕事の合間や夜間に「明日の予約を取りたい」と思っても、電話がつながる時間まで待つ必要があり、その間に他のクリニックを検索して予約を済ませてしまう患者さまもいらっしゃるのではないでしょうか。
受付スタッフの対応時間にも限りがあります。作業療法士として現場に立っていたころ、診察と診察の合間に受付が電話対応に追われ、来院された患者さまをお待たせしてしまう場面を何度も見てきました。電話が鳴り続ける状況はスタッフの負担が大きいだけでなく、電話をかけた患者さまにとっても「つながらない」という体験につながりやすいものです。
こうした取りこぼしは統計として表に出にくいため見過ごされがちですが、電話予約のみに頼る体制の弱点として意識しておく価値はあるのではないでしょうか。
Web予約の型|時間帯予約・順番待ち・当日受付をどう組み合わせるか
クリニックの予約システムには、いくつかの型があります。代表的なものを整理します。
- 時間帯予約型:「14時〜14時20分」のように診察時間の枠を指定して予約する方式。診療時間の見通しが立てやすい反面、急な体調不良での受診には向きにくい面があります。
- 順番待ち受付型:来院前にWeb上で受付を済ませ、院内での待ち時間を短縮する方式。当日の混雑状況によって目安の時間が前後することを、患者さまにあらかじめ伝えておく必要があります。
- 予約なし当日受付との併用:予約枠を一部確保しつつ、予約なしの来院も受け付ける運用。急患や飛び込みの患者さまを受け入れる余地を残せます。
いずれの型にも一長一短があり、どれか一つが常に正解というわけではありません。診療科の特性や、どのような受診行動が多いかによって、向いている型は変わってくると考えています。
診療科と患者層で最適解は変わる|内科と皮膚科の違い
予約システムの型を選ぶうえで欠かせないのが、来院される患者層の違いです。
高齢者の方が中心となる内科では、スマートフォンでの予約操作に不慣れな方も一定数いらっしゃいます。Web予約を導入する場合も電話予約の窓口を残し、家族が代わりに予約する場面も想定した、シンプルな操作画面が求められるのではないでしょうか。順番待ち受付を主軸にしつつ、電話予約を併用する形が現実的なクリニックも多いと考えられます。
一方、働く世代が中心となる皮膚科では、診療時間内に電話をかけること自体が難しい方が少なくありません。夜間や休日でも予約操作が完結する時間帯予約型のニーズが高く、スマートフォンからの手続きのしやすさが選ばれる理由になりやすい傾向があります。
このように、同じ「予約システムの導入」でも、診療科や患者層によって適した設計は変わります。他院の事例をそのまま取り入れるのではなく、自院の患者さまの受診行動に照らして検討することをおすすめします。
予約システムの導入でクリニックの集患につなげるには|ボタンの位置とスマホでの見え方
予約システムを導入しても、ホームページ上での見せ方次第で、実際に使われる頻度は大きく変わってくると考えています。
まず意識したいのが、予約ボタンの位置です。トップページの目立たない場所にしかリンクがなかったり、複数のページをたどらないと予約画面にたどり着けなかったりすると、せっかく導入したシステムが使われないまま埋もれてしまう可能性があります。ホームページ全体の問い合わせ導線をどう設計するかについては、ホームページの問い合わせを増やす導線の作り方でも触れていますが、予約ボタンについても同じ考え方が当てはまります。
もう一つ見落とされやすいのが、スマートフォンでの表示です。多くの患者さまはスマートフォンからアクセスしており、ボタンが小さすぎて押しにくい、予約フォームの入力欄が画面からはみ出す、といった状態では、途中で離脱されてしまう可能性があります。スマホ表示の具体的な注意点は、クリニックのホームページのスマホ対応|患者が離脱する3つの理由で詳しく解説していますので、あわせてご確認ください。
予約システムは、導入した時点がゴールではなく、患者さまが迷わずたどり着けるかどうかを継続的に確認していく必要がある仕組みだと考えています。
まとめ|予約システムは導入後の使われ方まで見て設計する
- 電話予約のみでは、診療時間外や受付対応の限界による取りこぼしが生じる可能性がある
- Web予約には時間帯予約・順番待ち・当日受付との併用などの型があり、それぞれ一長一短がある
- 高齢者中心の内科、働く世代中心の皮膚科など、診療科や患者層によって適した設計は異なる
- 導入後は、ホームページ上の予約ボタンの位置とスマホでの表示のされ方が、実際に使われるかどうかを左右する
まずは、ご自身のクリニックのホームページをスマートフォンで開き、予約ボタンがどこにあるか、何度タップすれば予約画面にたどり着けるかを確認してみてはいかがでしょうか。
作業療法士として20年以上、医療介護の現場を歩いた専門家が、貴施設のホームページを拝見し、改善ポイントを3つに絞ってお伝えします。契約義務はありません。
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