Googleマップの口コミに星1つの評価がついているのを見つけたとき、どう対応すればよいか迷う事務長・広報担当の方は少なくないはずです。診療所であれば院長ひとりで判断できることも、病院では話が違います。口コミの内容は「待ち時間」「受付対応」「特定の職員の態度」など部署をまたいで発生するため、対応窓口が組織として整理されていないと、その場しのぎになりがちです。
この記事では、個別の返信例文集ではなく、病院として押さえておきたい判断基準とやってはいけないことを整理します。
病院の口コミが悪くなる典型的な場面
病院の口コミには、悪い評価がつく場面にある程度のパターンがあります。
- 待ち時間への不満: 予約制でも待たされた、会計まで長かった
- 受付・事務スタッフの対応: 言葉遣いや説明の仕方への不満
- 特定の診療科・職員への言及: 「〇〇科の対応が」「担当の看護師が」といった名指しに近い表現
- 設備・案内面: 動線のわかりにくさや駐車場の混雑
私はこれまで作業療法士として複数の病院でリハビリ業務に携わってきましたが、患者さんの不満は診察室の中よりも、その前後の場面で生まれていることが多いと感じます。口コミの不満の多くは医療行為そのものではなく、受付や会計での「情報の伝わり方」に起因している、というのが現場を歩いてきた実感です。
返信するかどうかをどう判断するか
悪い口コミを見つけたら、まず考えるべきは「返信するかどうか」です。すべてに返信する必要はありません。
- 返信を検討する場面: 事実誤認があり誤解が伝わるおそれがある、建設的な改善提案が含まれる、受け止めを示すこと自体に意味がある
- 控える・慎重に扱う場面: 実名や症状・受診日時など個人を特定できる情報がある、悪意ある誹謗中傷で反論が炎上を招きかねない、内容が曖昧で指摘の対象が特定できない
この判断を個人の裁量に任せると、部署によって対応の温度差が出たり放置されたりしがちです。誰が一次確認し、誰が承認し、いつエスカレーションするかをあらかじめ組織で決めておくことが欠かせません。多くの病院には患者相談窓口が別に設けられています。返信は広報・事務部門が担い、深刻な内容は同窓口へエスカレーションする分担を平時から文書化しておくことをおすすめします。
返信の書き方の原則|守秘義務を最優先に考える
返信すると判断した場合も、もっとも重要な原則は受診の事実を含め、個別の事実に触れないことです。
医療従事者は刑法上の秘密漏示罪や保健師助産師看護師法などに基づく守秘義務を負っており、これは個人情報保護法上の適正な取り扱い義務とも重なります。仮に投稿者が本当に受診した患者だったとしても、「当院を受診されたことは確認できません」といった形で受診の有無に言及すれば、それ自体が第三者に受診の事実を明かすことになりかねません。投稿者が匿名でも、返信で事実を認めたり否定したりすれば守秘義務違反のリスクが生じます。
返信では次の原則を徹底しましょう。
- 受診の有無・症状・診療内容には一切触れない: 個別の事実そのものに言及しません
- 一般的な受け止めとお詫びの言葉にとどめる: 詳細な説明はコメント欄で行いません
- 個別のやり取りが必要なら窓口を案内する: 「患者相談窓口までご連絡いただけますと幸いです」といった形で誘導します
- 感情的な表現を避け、簡潔にする: 反論と受け取られる長い説明は、かえって印象を悪くすることがあります
病院では複数の担当者が返信を書く可能性があるため、この原則を文書化し共有しておく必要があります。
やってはいけないこと
病院として避けるべき行為を整理します。
好意的な口コミを金品や便益と引き換えに依頼すること。「良い口コミを書いてくれたら割引します」といった対価と引き換えの投稿依頼は避けてください。2023年10月以降、ステルスマーケティングは景品表示法の規制対象であり、対価を提供した口コミが自発的な感想に見える状態は不当表示に該当するおそれがあります。
職員や関係者による自作自演の投稿。職員やその家族・知人に、患者を装った好意的な口コミを投稿させる行為も避けるべきです。発覚すれば違反投稿の削除やプロフィール機能の制限、警告の表示などの対象となる可能性があるほか、病院としての信頼を損なうことにつながります。
体験談を広告として利用すること。医療広告ガイドラインでは、患者等の主観・伝聞に基づく治療の内容や効果に関する体験談を医療機関の広告として用いることは原則禁止されています。費用負担や掲載依頼を伴う体験談の収集は「広告」とみなされる可能性があるため、良い口コミを増やしたい目的でも、患者の声を医療機関側から依頼・提供する形で掲載することは避けましょう。
「削除できます」と断定すること。削除依頼は、投稿がプラットフォームの規約に違反する場合にGoogleなど運営元へ申請できるものであり、申請しても削除される保証はなく判断は運営元に委ねられます。名誉毀損等の疑いが強い場合は、弁護士等の専門家への相談をおすすめします。
口コミより先に見直したい院内の運用
個別の口コミへの対応も大切ですが、根本的な対策は、悪い口コミが生まれにくい体験を院内でつくることです。
- 待ち時間の見える化: 電光掲示板等で目安を示すだけでも、不満の発生を抑えられることがあります
- 部署横断での情報共有: 指摘の多い部署を集計し、該当部署へフィードバックします
- 患者相談窓口の周知: 口コミサイトへの投稿前に院内窓口へ相談してもらえるよう案内します
- Googleビジネスプロフィールの情報整備: 診療時間等が古いままだと不満の原因になります。整え方はGoogleビジネスプロフィールの整え方も参考になります
ホームページの表現面も、医療広告ガイドラインに沿った情報発信ができているか確認しておくと安心です。詳しくは医療広告ガイドラインとホームページで解説しています。
まとめ|組織としての判断基準を先に決めておく
病院の口コミが悪いときの対応について、典型的な場面・返信の判断・書き方の原則・やってはいけないことを見てきました。
- 口コミの内容は部署横断で発生するため、対応窓口とエスカレーション経路を組織として決めておく必要があります
- 返信では、受診の有無を含め個別の事実に一切触れないことが守秘義務を守る大前提です
- 対価と引き換えの口コミ依頼や職員による自作自演は、ステマ規制・医療広告ガイドラインに抵触するおそれがあり避けるべき行為です
- 削除依頼をしても削除される保証はなく、深刻なケースは専門家への相談が現実的な選択肢です
とはいえ、こうした判断基準を院内だけで整理し、対応フローとして文書化するのは簡単ではありません。
作業療法士として20年以上、医療介護の現場を歩いた専門家が、貴施設のホームページを拝見し、改善ポイントを3つに絞ってお伝えします。契約義務はありません。
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